
建物全景。淡路島のガルバリウム波板に囲われた住まいです。

リビング全景。ロフトスペースからの見下ろし。

ポリカーボネイトの建具で閉じることの出来るキッチン。キッチンは大工さんに製作していただきました。

淡路島での家づくり
若いご夫婦の情熱から始まった二世帯住宅
「結婚を機に、自分たちの家を建てたい」。
そう語る若い施主が、フィアンセを連れて事務所の扉を叩いてくださった日のこと。その真っ直ぐな情熱に引き込まれるように、その日のうちに淡路島の敷地へと向かっていました。この「キチキチハウス」は、そんな印象的な出会いから生まれた、幸せに満ちた二世帯住宅です。
キチキチの条件を創造の力に
このプロジェクトには、いくつかの「キチキチ」な与件がありました。住宅金融公庫の融資に適応する敷地面積、ご両親との同居を叶えるための床面積、そして限られたご予算。しかし、それ以上に大きかったのは、お二人の新しい暮らしへの夢でした。
お二人の名にある「吉」の字をいただき、「吉2(キチキチ)ハウス」と名付けたこの家は、制約を創造のバネに変える挑戦となりました。
回遊動線と一室空間が生む、コンパクトで豊かな暮らし
プランは1階に親御様の居住空間を、2階にお二人の住まいを配置。浴室を共有することで、効率的でコンパクトな設計としています。
2階は、多角形プランのほぼ中央に設けた階段室の周りをぐるりと回遊できる、開放的な一室空間としました。どこにいても家族の気配を感じさせながら、空間を緩やかに分節します。その上には、遊び心あふれる屋根裏ロフトも設え、暮らしの楽しみを広げます。
ポリカーボネートの行灯「光の階段室」
この家のデザインを象徴するのが、半透明のポリカーボネート板で囲んだ階段室です。日中は柔らかな自然光を階段室にもたらし、暗くなりがちな通路を生活空間として活性化します。夜になると階段室内部の照明によって行灯のように灯り、リビングをはじめ2階全体を優しく照らし出す「光のコア」となります。
限られた条件の中で知恵を絞り、施主の想いに寄り添いながら、豊かさと遊び心を詰め込んだ住まいが、淡路島に完成しました。

建物全景。変形地に建つ、不思議な多角形。

玄関正面

オープン下駄箱の玄関

1階。2世帯両親のリビング。

1階。2世帯両親の寝室から、リビングへ。

階段室。
1階壁はラワンベニヤ、2階壁はポリカーボネイトの波板を貼りました。同居するご両親の1階エリアから、2階の施主様エリアを体感的に切り替えています。

階段室見上げ

階段室を2階から見返し
2階の明かりと人の気配がぼんやりと1階へ届きます。

階段を上がると、左手の大開口から緑が目に飛び込んできます。そのまま洗面スペースに。

ベッドコーナー。カーテンで区切り普段は開放。リビングの狭さを感じさせないようにしています。奥のカーテン向こうはクローゼット。

リビング。
窓からは、どちらを向いてもほぼ緑が見える環境です。

リビングとキッチンの夜の様子。
キッチン上はロフトスペースになっています。


階段室に夜、明かりをつけるとは大きな行灯(あんどん)に早変わり、ほんのりとした明るさを楽しめます。
行灯の向こうはさらに、キチキチこども用スペース。

夜景
Photo:絹巻豊
建築概要
【 敷地概要 】 ・場所/洲本市 ・敷地面積/104.02㎡ ・用途地域/市街化区域 第1種低層住居専用地域 建蔽率70%・容積率400% 第1種高度地域(5M+1.25/1<12M)・高さの 最高限度10M ・前面道路幅員(北東)4.7m
【 工事概要 】 ・建築面積/51.89㎡ ・延床面積/101.21㎡ ・構造/木造 地上2階 ・主要用途/専用住宅
【 主な外部仕上 】 (外部) ・屋根/ガルバリウム鋼板波板 ・外装/ガルバリウム鋼板波板
【 主な外部仕上 】 (1階) ・床/フローリング ・壁/紙壁紙(ルナファーザー) ・天井/ラワンベニヤ
(2階) ・床/ラワンベニヤ ・壁/紙壁紙(ルナファーザー) ・天井/紙壁紙(ルナファーザー)
【 設計/施工 】 ・設計/建築:P_kan:庄司洋建築設計事務所(担当:庄司洋) ・施工/南実業(担当 南 芳治)
完成:2001(h13)年9月

1年経って
kichi*kichiに住んで一年が経とうとしています。
この土地に一目惚れし、自分の土地(未購入時)でもないのに 色々思いを巡らしていたのが、ついこの間だったような気がします。
土地の利点である周りの緑を部屋の中に取り込み、 四季や天候を自然に感じとれるよう設計して頂いた所が 一番気に入っています。 内部はけっして広くないですが、壁側の天井を低めに抑え 中心に向かって天井を高くすることで、 実際の広さ以上の開放感があります。
設計段階では天井が低すぎるのではないかと心配でしたが 住み始めてみて設計の意図が分かったような気がします。
設備も安価な物しか使ってないですがそれを安っぽく 見せない所が庄司さんのセンスだと思います。
特にキッチンは「ショウジキッチン」と勝手に 名付け大事に使っています。 メーカー品のように至れり尽くせりではないですが、 全てのパーツをカタログで探して作ったオリジナルキッチンに満足しています。
家作りと結婚という二つの重大行事を同時進行で行い、 完成した「kichi*kichiハウス」とこれからも共に歩んでいこうと思っています。
(2002/09/19/施主様より)